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誰かの話し声が聞こえる。
頭に当たる硬い感覚をじっと堪えながら懸命に目を瞑る。
浮遊感は感じないけれど、窓の外を見るとたしかに自分は空にいるのだとわかる。
今のうちに寝てしまおう。
そうしないと明日の仕事に影響が出る。
そうは思うけれど硬い感覚にも慣れないし、空の中にいる、という少年のような心が騒いでいるのだ。
飛行機なんて何回も乗っているのに。
ぺたりと窓に触れる。
外に手を伸ばすことは当然のようにできない。
それでも今自分は空に触れている、と錯覚してしまう。
このままずっと空の上にいれたら、なんて。
鳥にいつかなれると信じていた小学二年生の俺はもうスーツの中に隠れてしまったはずだ。
さぁ、早く寝てしまおう。
ぐらりと隣の女性の頭が前方に揺れた。
目が覚めたら今、空の上にいたことは夢だったと理解出来るはずだから。
おやすみ。
キーン、と遠いところで音が鳴った。
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