2 不思議くん。

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 実は最近、私はある悩みを抱えている。  それはベッドに入って目を瞑ると、必ずと言っていいほどアイツの顔が浮かんでしまうことだ。  意地悪をしてくるときによくする馬鹿にしたような冷めた顔と、鍋洗いのときにあくびをしながら壁に寄り掛かった面倒くさそうな顔とがグルグル交互に現れる。  こんなことになってしまった原因は多分、机に置いてあった絆創膏。  あれは十中八九、南がくれたものに間違いないだろう。証拠にチャイムギリギリで教室にやってきた南は暫く無言で自分の机の上を見つめたあと、お礼だと理解し、私が置いた飴玉を口に放り込んで「もっと腹の足しになるもんよこせ。気が利かねー奴」とわざと聞こえるように悪態をついてきたからだ。  ……ああ、思い出すと腹が立ってくる。  でも南は絆創膏をくれた。一言も怪我したなんて言ってなかったのに気付いてくれて。もしかしたらそんなに悪い奴じゃないのかも、なんて。かと思ったらすぐに嫌なこと言ってきたり、してきたり。  いい奴なのか悪い奴なのか全然わからない。  わからないと気になって考えてしまう訳で……。  そんなこんなでここ数日なかなか寝付けない日々を送っていたら、とうとうやらかしてしまった。 「や、やばい! 遅刻する!」  焼いてない食パンを口にはさみながら、私は慌ててブレザーを羽織る。  洗面台で髪をとかしながら、なんとか片手で食パンを口の中に詰め込み、物凄い勢いでローファーを爪先につっかけ、勢いよく玄関のドアを開けた。
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