2 不思議くん。

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「いってきまーす!」 「ちょっと明理! 待ちなさい! おべ――」  バタン。  ドアが閉まる音の向こうでお母さんが何か言う声が聞こえたけれど、頭の中には「遅刻する!」という文字がいっぱいで、私は構わず駅に向かって駆けだした。  それがいけなかった。  昼休みの今。猛烈に反省してる。 「まあまあ、よかったじゃない。購買デビューできて」  机をくっつけてお弁当を広げる風華ちゃんがクスクスと笑う。 「よくないよ~。お小遣い少ないのに無駄遣いしちゃった」  お弁当を食べようと鞄を開いたら、目的のものが見当たらなくて、そこでやっと自分がお弁当を忘れてきたことに気が付いたのだった。  私は買ってきた調理パンに視線を落とし、ため息をつく。 「でも、昨日の夜から時計が止まってて、実は急がなくても全然時間大丈夫だったのにっていうところが明理ちゃんらしいよね~」 「うう。登校したらまだ誰もいないんだもん。びっくりしちゃった」 「でも普通気付かない? 少なくとも電車乗る時点で気付くでしょ。電光掲示板とか」 「あははは。ホーム入ったら、ちょうど電車来て飛び乗っちゃったから見てない」  湊明理よ。あなたはなんて間抜けな奴なんだ。自分で言ってて情けない。  がっくりと肩を落とし、調理パンの袋を開ける。  まぁ、こういうのも偶にはいっか。用意してくれてたお母さんには悪いけど、今日はこのパンを美味しくいただくことにしよう。  なんとか自分を納得させて、口を開いたそのときだ。上から腕が伸びてきて、するりと手からパンを奪い去っていった。
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