2 不思議くん。

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「あっ! あーーー!!」 「……コロッケパン、ね」  目の前で私のお昼が南に齧られていく。  わ、私のお昼ご飯があ。  口をパクパク開け閉めしながらパンを涙目で見つめていると、南がしょうがないものを見るような目で呟いた。 「お前、パンぐらいで泣くなよ。浅ましいな」 「浅ましいのはどっちよ。あとの体育で倒れたら恨んでやるから~」 「大袈裟」  人のものを取っておいて何て態度だ。  やっぱり南は嫌な奴! そう思っていると、パンを持っている手とは反対の手で南が見慣れたピンク色の巾着袋を私の顔の前で揺らした。 「ん」 「へ?」 「もしかして自分の物かどうかも判断つかないほどバカな訳?」  私が受け取らなかったからか、巾着袋が机の上に着地する。  中を覗いてみると、これまたやっぱり見慣れたお弁当箱が顔を出した。 「え? なんでアンタがこれ持ってるの?」 「頼まれたから」 「え? 誰に?」 「……お礼はこのコロッケパンでいいから」  南はそう言って私の質問には答えず、スタスタと背を向け歩いて行ってしまった。  私はポカンとその後ろ姿を目で追う。 「……どういうこと? 一体」 「さあ?」  風華ちゃんと一緒に首を傾ける。 「でもまあ、何だかわからないけどお弁当もきたことだし、明理ちゃん食べよ」 「う、うん。そうだね」  いただきます、と手を合わせておかずを口に運んだ。 「……毒入りだったりして」  南の不可解な行動に、何となく箸の進みが遅くなるのは仕方がないことだった。
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