2 不思議くん。

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「明理ちゃんお疲れさま」 「ありがとう。風華ちゃん」  体育館の端っこ。  ヘロヘロと床に腰を下ろした汗だくの私に風華ちゃんがタオルで心地いい風を送ってくれる。邪魔にならないよう結んでいたポニーテールはヨレヨレだ。 「惜しかったね。あと一点だったのに」  六限目の今は体育で、何チームかに分かれてバスケットボールの試合をしている真っ最中。  南が持ってきたお弁当に毒は混入されていなかったようで、私は元気よくプレーして帰ってきたところだ。 「うん。もし私に羽でも生えてたらもう一点くらい入れられたのに」 「え? みんなの頭の上飛ぶの?」 「うん。トラベリングいらず」  真面目な顔して答えて、ふたりでプッと笑いあう。  少し体力も復活してきた。  今日の授業は勝ち抜き戦で、一番最初のチームでプレーして敗北した風華ちゃんとさっき負けてきた私はこのあと勝ち進んでいる人達を応援するのみ。  負けちゃったのは悔しいけど、風華ちゃんと一緒にゆったり観戦するのも楽しいものだ。 「あ。上野(うえの)くん」  乱れたポニーテールを結びなおしていると、風華ちゃんが陽太の名前を呼ぶ。  風華ちゃんの言葉に女子の隣のコートで試合をしている男子達の方へ視線を向けると、ちょうど陽太が試合するようで並んでいるところだった。
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