2 不思議くん。

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「あ、ほんとだ。陽太~! 頑張れ~!」  手を大きく振って声援を送ると、陽太が気付いて「おう!」と元気よく拳を天井に向かって突き上げる。  周りの男子達に肩を小突かれたりとからかわれながら自分の持ち場へ散らばっていった。  キラキラ輝いている。  少しだけ苦しくなった胸には気付かないふりをして、楽しそうに走っていく後ろ姿を視線で追っていた。  すると突然視界に割り込んできた人物がひとり。  思わず「げ」と嫌な声をだしてしまった。 「あら。相手チームに南くん発見」  風華ちゃんが何の気なしにその名前を呼ぶ。 「そういえば南くんって運動神経とかどうなんだろうね」 「うーん。わからないけど、真面目に汗とか流さなそうな気はするな」  ああいうクールを気取ったようなタイプは熱くなることを格好悪いって嫌うような気がした。ただの苛めっ子の癖に。  完全な偏見の目で南の横顔を半ば睨むように見つめる。  すると南の顔が偶然こっちに向いて、バチッと目が合ってしまった。 「あ……」  何にも悪いことはしていないのに何故か見つかった! と慌てる私。  南は小バカにしたように口の端だけで笑った。 「なっ! 見た? 風華ちゃん。今の見た?」 「ふふ」 「むかつく。アイツむかつく~」  あの憎たらしい態度、どうにかならないものだろうか。  何であんな奴がモテるのかわからない。  今も隣で数人の女子達が小さく南が格好いいと騒いでいる。  いやいや。目を覚まして。アイツは嫌な奴だよ? 苛めっ子だよ? どうせこのあと終始棒立ちプレーだよ? 「あ、始まったみたい」  笛が鳴って、ボールが宙に浮いた。  よし。南のとちったところ探して、あとで散々つついてやる。  ……そう意気込んだというのに、私の期待は意外にも裏切られた。
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