2 不思議くん。

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「きゃー。南くん格好いい!」  さっきまで控えめに騒いでいた女子達の声が爆発したように大きくなる。 「スリーポイントとか格好良すぎ~」  南は華麗に次々とシュートを決めていく。  ドリブルは軽やかで、フェイントまで織り交ぜながらコートを駆け抜けた。 「な、なにあれ」 「凄いね南くん。格好いい」  風華ちゃんが穏やかに感想を呟く。  体育館シューズがキュッと甲高い音を鳴らす度、南の毛先から汗が爽やかに飛び散る。  クール気取って棒立ちなんじゃなかったの?  私は戸惑いながらいつの間にか南の一挙一動に釘付けになっていた。 「上野くん、悔しそうだったね」  途中から陽太が南について頑張ってたんだけど、前半に入れられた点に追いつくことはできなかった。 「明理ちゃん、上野くん落ち込んでるようだったらお菓子でも餌付けてくれば?」 「いやいや。陽太はペットじゃないから」  教室に向かう廊下を歩きながら風華ちゃんの冗談に笑う。  風華ちゃんがわざわざ陽太の話題を取り上げてからかいつつも、本当は私の背中を後押ししてくれているのに気付いていた。  実は風華ちゃんにはまだ私が陽太に振られたことを話していない。  振られたばっかりの頃は辛くて言葉にするのも死んじゃうくらい苦しかったから言えなかったのだ。  風華ちゃんは中学校のときから陽太とのことを応援してくれていた。  同じクラスになって仲良くなって、小学校から一緒の陽太のことが好きなんだって友達に初めて打ち明けた相手が風華ちゃんだった。  風華ちゃんは驚いて、すぐに花を咲かせたように表情を輝かせた。  風華ちゃんはいつだって私と陽太のことを自分のことのように喜んだり、落ち込んだり、悩んだり。ずっと見守ってくれている。  だから言わなくちゃいけない。「私、陽太に振られたの」って。
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