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「またその内試合やるんじゃない? ほら、来月に確か球技大会とかあるしさ、その練習も兼ねて授業でやりそうじゃん」
「あ、そっか! そうだな。よし! それまでにドリブルの練習でもしよっと」
陽太がニカッと笑う。
友達に小突かれて楽しそうに駆けていった陽太の背中を見たときと同じ、苦しい何かが胸を締め付けたけど、やっぱり私は気付かないふりをした。
「応援してくれたのに悪かったな」
陽太はあの時に私が言った『今まで通り』を守ってくれている。
だから私も守らなければいけない。自分が望んだことだ。
「ううん。全然全然。陽太の負けっぷり、いい暇つぶしになったし~」
「うわあ。てめ~」
陽太ががっくりと肩を落とす。
結構本気で悔しがっているようだ。
「あはははっ。冗談冗談。元気出しなよ。風華ちゃんは真剣に応援してたから!」
ね? って風華ちゃんに笑いかけると、陽太が一筋の光を見つけ出したかのように風華ちゃんへと顔を向ける。
「マジ? さんきゅ……」
「うん! 上野くんが靴紐踏んずけてコケたところまでバッチリ見てたくらい応援してたよ!」
「…………」
あ。再起不能?
陽太の頭がわかりやすく下に垂れた。
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