2 不思議くん。

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 階段の前に差し掛かると風華ちゃんが思い出したように声を上げる。 「明理ちゃんごめん。今日私週番だから先生にクラスで配るプリント取りに来てって頼まれてたの。今ついでに行ってきちゃうね」 「一緒に行こうか?」 「大丈夫。先教室行ってて~」  風華ちゃんはにこやかに手を振ると小走りで廊下の角を曲がっていった。  もしかして、気を遣ってくれたのかな? 「早く言わなくちゃな……」 「え? なに?」 「あ、ううん! 何でもない何でもないっ」 「行こ」って陽太に笑いかける。  階段を上がろうと一段足を上に乗せたところで、後ろから腕を掴まれた。 「……あのさ、ちょっといい?」 「え?」 「ちょっと、話したいことあるんだけど」  見えた陽太の瞳が真っ直ぐこっちを向いていて、一瞬この後の帰りのショートホームルームが頭を掠めたけれど、私はこくりと頷いた。 「ごめんな。時間取らせちゃって」  誰かに聞かれたくなかったのか、移動しようと言って歩き出した陽太のあとについて辿り着いたのは裏庭。ちょうど体育館の後ろ辺りで、青々茂った木々と綺麗に四角にカットされた垣根にツツジの花が揺れている。 「ううん。どうしたの?」  首を傾げ聞くと、陽太が言い難そうに落とした視線を右から左へ動かした。  どうしたんだろう。  陽太の様子からあまりよくない話なんじゃないかって心配になった。  すぐに脳裏に浮かんだのは失恋したあの日のこと。 『いつも通り』と言って一ヶ月以上が経つけど、やっぱり居心地悪いからって言われるのだろうか。距離を取ろうって。
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