1 アイツの嫌がらせ。

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 南優人(ゆうと)。この春から同じクラスで出席番号が隣。私の苗字が(みなと)でアイツが南だからそうなってしまった。席順に直したら前後で、学期はじめは何かと出席番号の並びで物事を進めさせようと先生が誘導するものだから、もうどこに行ってもアイツが周りを付きまとう。  顔はまぁ、イケメンなんだけど、ルックスの良さではカバーしきれないほどの性格の悪さときていて、暇さえあれば私に嫌がらせをしてくる陰険なやつだ。  本当はこんな人を悪く言うような言い方、私だってしたくない。だけど……。 「早起きして一時間以上かけて作ったヘアスタイルを一瞬で……」 「ああ。台無しにされたんだ」 「うわ~ん」 「よしよし」  立ったまま風華ちゃんの机に突っ伏した私の頭を撫でてくれる。優しい。 「一時間だよ? 一時間。酷くない? 編み込み頑張ったのに」  認めたくはないけれど、私は何に対しても本当に不器用だったりする。  ただの三つ編みだってそれなりに時間が掛かってしまうし、おまけによく見ると編み目が可笑しくなっていることもしばしば。  そんな私が編み込み頑張ったんだよ? 雑誌に載ってたモデルさんの髪型がすっごく可愛くて、前日にやり方めっちゃ読み込んで予習して。イメトレもバッチリで。それでも朝起きて実際にやってみたら指が思うように動かなくて、何度もやり直して。やっとでできたサイドから編み込んでそのまま二つに結んだ可愛い髪型。  鏡で何度もチェックしてうきうきして家を出た。それなのに!
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