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「ごめんなさい! 本当にごめんなさい!」
むすっと顔でそっぽを向く南に必死に謝る。
あのあと放心状態だったところに下から「どけ。いつまで乗ってんだ。重い」と容赦ない言葉が飛んできて我に返った。
慌てて飛び退いたんだけど、そこから南の機嫌がいつにも増して悪い。
でも今回は明らかにこっちに非があるから、土下座まではいかないけど脚はしっかりとお尻の下に折りたたんで、草の生えた地面に手をついて頭を下げていた。
「お前さ、もしかして起きたまま寝てるわけ? どんだけ寝んの大好きなんだよ」
以前も思ったどうして私が寝るの大好きなことを知っているんだ? ネタで南が嫌味を言ってくる。しかし今の私に言い返す権利はなく、素直に頭を下げ続けた。
「本当に私の不注意っていうか。……ごめんなさい」
南の言う通りだ。寝ぼけてない限り普通落っこちたりしないよ。
自分の駄目さ加減にしゅんと肩を丸める。
どこかから草の擦れる音がして、そういえば猫くんを追ってきたんだということを思いだした。当然ながら今ここに猫くんはいない。
息を吐く音が聞こえる。
「……よかったじゃん」
「え?」
「心配してもらえて」
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