2 不思議くん。

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「なっ!」 「そんなんだから振られんだよ。ガキ」 「ふっ!? ひ、ひどっ! しかもガキって二回言った!」 「ガキ」 「あ~! 三回目!」  座ったまま南を睨み付ける。  南はふぅっと息をついた。 「……怪我は?」 「は?」 「だから怪我!」 「え? あ、どこも……。南が庇ってくれたから」 「あっそ。じゃあいいわ」  それだけ言って踵を返しさっさと行ってしまった。  取り残された私はポカンと口を開ける。 「南って、よくわからない」  会話は唐突だし、意地悪なこと言ったと思ったら優しいこと言ってみたり……。  結局何もされなかったポニーテールが右に揺れた。 「ただいま~」  リビングにいるだろうお母さんに向かって声を上げる。  あのあと暫くひとりで座ってたんだけど、遠くでカラスが鳴いて、何やってるんだろうって我に返った。  教室のドアを開けると、風華ちゃんが日誌をゆったり書きながら待ってくれていて、ショートホームルームをさぼった私と陽太。ついでにいなかった南の分も適当にフォローしておいてくれたみたいだった。  よく三人分も誤魔化せたなって思ったけど、風華ちゃんは私と違って反省文とか、ましてや鍋なんて洗わされることはない優等生だから先生もあまり追及しなかったのだろう。もし不審に思っているとしたら私たちが無理やり風華ちゃんを丸め込んだと思っているに違いない。これも日頃の行いというやつだ。 「おかえり」  リビングのドアを開けるとお母さんがソファーに座って絹さやの筋とりをしている。  今夜は筑前煮かな。  ボールの中を覗いた。
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