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「駅までの道のり、気分よく歩いてたら後ろから自転車が走ってくる音がして。そしたらスルッて! スルッてヘアゴム外されてっ!」
外したヘアゴムを指で弾いて道端に捨てていったアイツの憎たらしい顔を思い出すと胸がムカムカと熱くなってくる。
片方外されてしまっては、もう片方だけ綺麗に結ばれていても不格好なだけだ。
私は泣く泣く捨てられたヘアゴムを拾いながらもう片方も震える手で解いた。
手ぐしを通したときに毛先が絡まって痛くて泣きたくなった。
何で南は私に意地悪ばっかりしてくるんだろう。
「まあまあ元気出して。編み込みなら今私がやってあげるよ?」
「え! 本当? 風華ちゃん!」
「そんなに凝ったのはできないけど、明理ちゃんよりは器用にできる自信あるな~」
クスクスと笑って風華ちゃんが立ち上がる。
おいでと手を振られ、私は引き寄せられるように風華ちゃんが座っていた席に腰を下ろした。
風華ちゃんはあっという間に綺麗な編み込みを作り上げていく。
「はい。完成」
「わあ。風華ちゃんありがとう!」
「どういたしまして」
形が崩れないように慎重に指先で触る。
触っただけで私が編んだものより綺麗に仕上がっているのがわかった。
手鏡を渡してくれて、鏡の中の自分と目が合う。
可愛い髪型は私の目にキラキラと映って、ついでに自分もキラキラして見えてくるから不思議だ。
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