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「風華ちゃん本当に本当にありがとう!」
「もう。大袈裟」
「だって嬉しいんだもん!」
えへへって笑って言うと、風華ちゃんが仕方ないなって感じで眉を下げて笑った。
風華ちゃんのお陰で私の機嫌は急上昇。風華ちゃんに免じて登校途中に起こった出来事なんか水に流してあげてもいい。
そう思ったときだ。
「あっ!」
ぐいっと引っ張られたと同時。髪の毛がパラパラと肩に垂れた感覚がする。
「おはよう。南くん」
風華ちゃんの穏やかな声が犯人の名前を呼んだ。
「……はよ」
面倒くさそうに素っ気ない挨拶を返した憎たらしい声。
私はわなわなと肩を震わせ、その声のする方へ勢いよく振り向いた。
「な、なにするのよ!」
目一杯の鋭い視線で睨み付ける。
だけどアイツはどこ吹く風だ。
「風華ちゃんがせっかく結んでくれたのに!」
「きもい」
「なっ!」
南は暴言を吐くとすっと冷めた視線を向けてくる。
「鏡なんかじっと見て、お前、ナルシストだったんだな」
その言葉にカアッと顔が熱くなる。
「な、ナルシストじゃないもん!」
「どうだか」
「風華ちゃんが可愛く編んでくれて。男の子にはわかんないかもしれないけど、可愛くしてもらうだけで嬉しくて何度も見ちゃうものなんだよ!」
胸の前で握りこぶしを作って口にした訴えは無視され、代わりに……。
「似合ってない」
バッサリと切って捨てられた。
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