55人が本棚に入れています
本棚に追加
「口数が少ないのはクール。愛想がないのは媚びを売らない隠れた真っ直ぐさから」
「……それ、誰が言ってたの?」
「クラスの女子みんな」
風華ちゃんの言葉に目を瞬かせる。
「みんな?」
「うん。みんな」
ニコニコと頷く風華ちゃんに、私は信じられないと眉を顰めた。
「騙されてる。みんな。あのルックスに騙されてる」
「サラサラの前髪に端正な顔立ち。この間鼻の形まで褒めてた子いたよ」
衝撃の事実に私はよろよろと机に手をつく。
もうこのクラスの、少なくとも女子は、アイツの手中に落ちてしまったんだと認識させられた。
「まあでも、実際格好いいし、何でそんな話題で盛り上がれるの? って疑問に思っちゃうことで騒いでる男子達より大人っぽくは見えるかもね~」
「……風華ちゃん」
ふわふわの見た目に反して飛び出した毒舌に苦笑する。
男子が今の発言聞いたら泣いちゃうだろうな……。
ひっそりと心の中で手を合わせた。
「それに南くんが意地悪するの明理ちゃんに対してだけだし。何かしたの?」
「それは私が聞きたい」
思い当たる記憶はない。
寧ろ『された』のは私の方だ。
今日だって……!
そこまで考えて、髪の毛をめちゃくちゃにされたことを思いだし、肩に垂れた毛先をぎゅっと握った。
せっかく、頑張ったのに……。
「こおらっ」
「きゃっ」
俯きがちになっていた頭に突然後ろから落ちてきたチョップに振り返る。
「陽太!」
「なあに落ち込んでるんだよ。見るからに肩落として」
鞄を肩に掛けた陽太が首を傾げながら立っている。
私はその顔にドキッと胸を弾ませた。
最初のコメントを投稿しよう!