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女の人が苦手。
その言葉に、今自分といるのも先輩にストレスを与えてしまっているのかと思い慌てると、先輩はキミは大丈夫だからと窘めてくれる。
「母親からすごく厳しく躾けられてね、塾や習い事はもちろん、女の子の前では紳士的なふるまいをしなさいとか、常に人から一目置かれる存在になりなさいって子供のころから言われ続けたんだ。いわゆる教育ママってやつでさ。
それで、女の人が怖いっていうのと、人前だとついつい自分を良く見せようとしちゃうんだよね…」
……そんな自分が嫌になる。そう言って顔を俯ける先輩に心が痛む。
「辛くは、ないですか……?」
思わず口から飛び出した私の言葉に先輩がびくりと身体を震わせる。
常に成績も優秀で、見た目にも気を遣っていて、どんな女の子にも優しい。
それが出来るのはすごいと思うが、そんなことを続けていては心も体も疲れてしまうのではないか。
私が正直な感想を伝えると、王子先輩はゆっくりと顔を持ち上げる。
「3日間恋人のルールを利用している私が言うのもなんですが、とりあえずそれ、やめてもいいんじゃないですか?
告白してきてくれた勇気に敬意を感じている、そんな先輩の優しさはルールを適応しなくても皆わかってくれていると思います」
皆が皆そうとは言い切れないが、告白する子は王子先輩の優しさに惹かれた部分も大きいだろう。
私もその一人だ。自信を持って「だからありのままの先輩を大事にしてあげて下さい」と添えると、先輩は強張っていた表情を少し緩める。
「……ありがとう、風紀委員長。このルールはキミで最後にするよ。でも、約束は守りたいんだ。明日までは僕の恋人でいてくれる?」
その言葉に大きく頷くと、王子先輩は晴れ晴れとした表情で笑ってくれた。
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