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 ついに今日が最終日。  私は女の人が苦手だという先輩にこれ以上恋人でいて欲しいと言うつもりはなかった。 頑張って告白をしたことで以前と比べて先輩との距離も近づいたし、何よりも本音で色々な話ができたという事実だけで満足だった。  今日は初日に告白をした裏庭でお昼ご飯を食べる約束をしている。 近道をしようと中庭を突っ切ろうとすると、ガラの悪い男子生徒4名に道を塞がれた。 『よぉ風紀委員長、お前最近調子乗ってねーか』 『俺らに不良やめろって言っておきながら、自分は不純異性交遊ってどういう事ですかぁ?』  風紀委員は恋人を作れないなんてルールどこにもないが、彼らの言っている事はわからないでもない。 いつもだったらここで議論を重ね、他の風紀委員立ち合いのもとマンツーマンの勝負に持ち込んで話を聞くところだったが、今日は先輩との約束がある。  私は、「王子先輩とは健全なお付き合いをしているだけなので」と早口で述べて脇を抜けようとするが、それを妨げるように囲いこまれた。 『王子王子って、アイツも本当ムカつくんだよなぁ、女いっつもはべらかしてよぉ』 『俺の彼女もあのクソプレイボーイに取られたんだよ、ムカつく』 そうして次々に発される罵詈雑言の数々になんというか、堪忍袋の緒が切れた。 「王子先輩だって苦労しているんです!先輩の優しさや強さを知らないくせに、勝手な事言わないでください!!」  感情が高ぶりやすい性格だと自覚はしていたが、いつもだったらこんな怒りに任せて大声を出すなんてことしなかった。冷静に考えて相手を逆上させることが目に見えているからだ。  しかし、大好きな先輩の事を一方的に中傷されたことに腹が立ち、つい勢いづいてしまった。  しまったと思った時にはもう遅く、いつの間にか背後に回ってきた男子生徒2名に押さえつけられ、『生意気なんだよ』と罵られながら、正面の男の拳が眼前に迫る。
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