本文

5/15
前へ
/15ページ
次へ
『なぁ、聞いたか?今度の王子先輩の恋人、一年の工藤円香らしいぜ?』 『あの風紀委員長だっけ?4月からの半年間で不良を15人も更生させたっていう』 『恋愛と無縁そうな顔してるのにやるなぁ』  次の日の校内では朝から私と王子先輩の話題で持ちきりだった。  一学年4クラスで構成された我が高校では情報はすぐに出回る。 風紀委員として学内の実情を知るのにはちょうど良いと思っていたが、自分の事が噂されているとなると何とも落ち着かない気分であった。  昼休みになっても動物園のパンダのように注目されていることに居心地の悪さを感じていると、急に教室の扉が開いて姿を現したのは件の先輩。彼はお昼ご飯を食べようと私を誘いに来てくれたみたいだった。  わざわざ迎えに来てくれたことに驚きを感じつつ廊下にいる先輩の元へ向かう。すると、取り巻きの女子達はそそくさと散っていった。こちらも先輩の提示したルールの一つで、彼が恋人といる時は相手の女子と二人きりで過ごしたいという意見がきちんと尊重されているからだ。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加