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 色んな人に遠巻きに眺められつつも中庭に出ると、木陰のベンチに腰掛ける。 お弁当を開け、しばらく互いに会話も無いまま黙々とその中身を食べ続けていた。  王子先輩について聞きたい事はたくさんあるのに、いざ恋人になると何から話してよいのかわからず口を開いては言いあぐねてしまう。そんな様子を慮ってか先輩は箸を休めて口を開く。 「……そういえば、風紀委員長って不良を15人更生させたっていう噂があるけど、あれって本当?」 自分に対して興味を持ってくれた事が嬉しくて感情が溢れる。私は、本当ですよ、拳で語り合いました…!と勢いづいて返すと王子先輩は何とも言えない表情で卵焼きを取りこぼした。 「え、暴力で……?」 「い、いえ、あー…その、私が相対した不良の方々って、勉強とかで自分に不満や不安があって力の弱い人間を虐めてしまったり、自分を見て欲しくて目立った悪事を働いてしまう人がほとんどだったんです」  もちろん、虐めや悪事を働いて他人に迷惑をかけることは良くないことである。 最初はそうやって被害に遭った人たちを守るために風紀委員に入ったが、その活動の中で、不良である彼らもいろいろな悩みを抱えているという事に気づいたのだ。 「でも、ただ普通に聞いても不良になった理由を教えてはくれないので、私が一本取ったらどうして不良をやっているのか教えてくれっていう条件で戦っていました」  ギャラリーのあるところでのマンツーマンでの戦い。地面にお尻が付いたら負けの一本勝負。風紀委員ではもはや名物となっていた。
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