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「僕と付き合って、何かやりたいこととかないの?」
次の日、恋人2日目の日は生憎の雨。
学内併設の食堂でお昼ご飯を共にし、互いに部活や委員会を終えた放課後の事だった。
下駄箱で待ち合わせをして駅に向かおうとした最中の先輩の発言に、私は手を顎に当てて考え込む。
「うーん……王子先輩の事もっと知りたいです」
行きつけのお店とか教えてくれませんか?
そう続けると、先輩は拍子抜けしたとばかりに肩を竦める。
もっとすごい事要求されるかと思った、と言われて「風紀委員ですから」と返すと妙に納得した表情で成程と破顔する。
王子先輩と過ごしてまだ2日目だが、自分に向けられる先輩の表情は少しずつ柔らかくなってきていて、それだけ自分に心を許してくれているのだと嬉しくなる。
王子先輩が連れて行ってくれたお店は学校とは反対側の駅の出口を抜けた先にある、昔ながらの小さな個人経営のカフェだった。
窓際の席に案内されると、黒いエプロンをつけた初老の男性が注文を取りに来てくれる。
彼はこのカフェのマスターで、その常連客らしい先輩は慣れた調子で挨拶を交わし、私の分もまとめて頼んでくれた。
「すごく…趣のあって素敵なカフェですね。学校の近くにこんなに落ち着けるところがあるなんて知らなかったです」
「気に入ってくれたみたいで嬉しいよ」
先ほどの店主がコーヒーを運んでくれる。
挽きたての良い香りを漂わせていて、ミルクと砂糖を摘まんで入れていると先輩の方から質問を投げかけられる。
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