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「風紀委員長はさ、3日間だけ僕とお付き合い出来るって言われて、どう思った?」
王子先輩は肘をついて、傘をさして通りを歩く人々を眺めていた。
突然の問いに驚きつつも、私はコーヒーを一口含んでから口を開く。
「王子先輩の事が好きな私はチャンスだと思いました。…でも、先輩はどうしてこんなに大変な事をしているのか少し不思議でした」
何人もの、それも良く知らない相手とお付き合いを続けるなんて自分には絶対に無理だと思った。正直に考えた事を口にすると、王子先輩はそうだよね、と相槌を打って理由を切り出す。
「せっかく勇気を振り絞って僕の事好きだって言ってくれたのに、相手の事をよく知りもせずすぐフッちゃうのは失礼かなって。
だから僕も真剣に3日間を過ごすから、それでも無理なら諦めてくれというルールを設けたんだ。…でも逆効果だったのかな」
付き合った子たちや一部の男子にはすごく恨まれてるからね。そう呟いた先輩の言葉には思い当たる節があった。
人気のある芸能人がヘイトのランキングの上位にも入るように、王子優真には良い噂だけではなく、悪い噂もたくさんあった。
例えば男子生徒からは○○ちゃんを王子に取られたと罵られ、フラれた女子生徒からは恋人期間に酷い事を強いられたと吹聴される。
風紀委員長である自分の耳にもその情報は入ってきていたが、それらは根も葉もない噂であったり、逆恨みも含まれるのだろうと先輩の優しさを知っている私は信じていた。
「王子先輩は、誰か好きな人がいるんですか…?」
本当の恋人を作らないという事は意中の相手でもいるのではないかと思い問いかけたが、先輩は首を横に振る。
「……誰にも言わないでほしいんだけど、実は僕、昔から女の人が苦手なんだ」
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