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友人たちと合流し郊外の静かな墓地へと向かう、傾きだした日差しが、地面を照らし、暑苦しいほどにセミたちの合唱の聞こえるなか、友人たちと彼の墓の前に立つ。
自然と涙が頬をつたうが、気丈に笑顔を作る彼女が痛々しかった。
そんな彼女を察したのかケージの中の猫も寂しげにニャーと、一鳴きし墓を見つめる。
日差しを浴びた菊の花の白色が眩しく見えた。
その帰りの駅での事だ。
友人たちと別れ自宅近くの駅でまた、ゼミの後輩とバッタリ出くわしたのだ。
「先輩、偶然ですね。」
その声を聞いたとき、僕も猫もねっとりと絡み付く悪意を感じ、身構えたがやはり彼女には伝わらない。
「シャー」
猫は自分の主人を守ろうと必死に威嚇するが、ケージの中からの威嚇など通用するわけもない。
「どうしたの?」
彼女は心配そうに猫をなだめようとする。
「先輩の事をとられないようにしてるのかな?」
仮面のような、取って付けた笑みが妙に気持ち悪かった。
多分猫もその気持ち悪さを感じているんだろう。
ケージのなかで爪を立て必死に威嚇する。
「先輩は今日はどちらに?」
後輩は白々しく言い放つ!
朝からずっと遠巻きにつけていたくせに!
僕も彼女の愛猫も気が付いていたのだが、 なにもできないから気にしないようにしていたが、あのじっとりと蛇のような気配を感じ続けていた。
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