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彼女は少し寂しそうな顔をしながら
「今日は墓参りにいっていたの」
うっすらうるんだ瞳を愛猫に向けて言った。
そんな顔を見たくない、何故だか僕も彼女の愛猫も胸を締め付けられる思いだった。
「先輩の大切な人なんですか?」
ゼミの後輩は遠慮なしに聞いてくる。
本当は知っているくせに!
だって彼を殺したのは他でもないお前なのだから!
でも、これは決して彼女には知られてはいけない!
彼女が復讐の炎に焼かれないため、彼女を悲しませないため、彼女に涙を流させないために!
しかしその願いははかなくも崩れ去ることになる。
悪意なき善人のために、悪意のない善意が時として悪意よりもひとを傷つけることになるのだから。
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