惑星密室マグロ・ミステリー!

7/9
前へ
/344ページ
次へ
 むろん、どの世界にも例外はある。不慮の事故や失踪で配給を受け取るべき世帯が消滅した場合だ。 「マグロが無くなったんだから、一家で蒸発しちゃえばいいのよ。大宇宙の意思が定めし試練に挑む流浪の一族~……痛い!」  中二病を患うグレイスをシアは小突いた。  重い空気をさとったのか、スカートの中が見えるのも気にせず、ソニアが疲れたように腰を下ろす。  「何だかなぁ。そういえば、あの紫色の光は幻だったのかしら」 「幻?そうだわ!」 シアが弾かれた様に翼をひろげ、ベランダから海岸のほうへ飛び立った。  ほどなく、フラスコを片手に息を弾ませて戻って来た。 「すっかり忘れてたわ。これよ。ベローゾフ・ジャボチンスキー反応よ」 黄色に染まったガラス容器をよく見えるように掲げる。   BZ反応液(ベローゾフ・ジャボチンスキー)は赤と青の全く異なる性質の混合液で、ある周期で交互に変色する。どちらか一方のまま状態が固定する場合があるが、それは見えざる力の介入を意味する。赤の場合は超能力者や魔法使いなど強力な力を持った人間、青の場合は森羅万象にあらがう謎の精神体「特権者」による攻撃をあらわす。  それが黄色に変色しているのだ。 「あれ? さっきは緑だったじゃない?」 グレイスが指摘すると、シアがうなづいた。     
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加