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豚骨ラーメンはヤバさマシマシ? これはアカン店や!
■ 白鳥座ブラックホール銀座
コト。男は最後の一滴までツユを飲み干すと静かに丼を置いた。
「ごちそうさま」
慣れた仕草で椅子を戻すと軽く会釈する。店主も爽やかな笑顔を返し、厳しい表情でフライパンを振りはじめる。
次の客が空いた座席に滑り込み、手短に注文する。
「ドカ盛、油タシタシ、ニラ気持ち多めm……」
「アイヨッ!」
聞き終えぬうちに程よく火が通ってギトギトになったレバニラ炒めが飛び出す。この間、わずか四秒フラット。流れが速いときは二秒を切る。
常連中の常連というか、階層も上の方になると阿吽の呼吸で済ませてしまう。それほどのエリートでない顔ぶれも「コール」と呼ばれる独特の符牒を使う。
食堂百科と称される外食産業専用スペースコロニー数奇屋では一瞬たりとも遅滞は許されない。
人類圏の津々浦々から客が押し寄せる人気レストランにおいては、従業員に負担をかけること=回転率の低下であり、待機列で苛立つ人々に対する宣戦布告を意味した。
ときおり待ち行列の順番が繰り上がることがある。その場合も狼狽せず詮索せず、そっと前に詰めなければならない。
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