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太陽の六十倍はあろうかという巨星が直径三十キロに満たない陥穽に流れ落ちていく。思わずここに終の棲家を構えてしまいそうな景観だ。
地球から遥か六千光年。白鳥座の首根っこにあたる星域は二十個あまりのブラックホールがひしめく「銀座」と呼ばれている。
このV-404も有名な白鳥座X1とはりあう暗黒孔の一つだ。
星を呑み尽くさんとする迫力が人々の食欲をかきたてるのだ。
食事を済ませたスロットマスター達が店外で二言、三言囁いた。
「『あの一家』には気をつけろ」と。
■ 量子チューブの謎
フレイアスター家のキッチンは出発のメシタキで忙しい。最悪の場合、白鳥座で感謝祭を過ごすことになる。めいめいの艦に調理具を積んだり、QAXで追加の食材を取り寄せたり大変だ。
コヨーテが白身魚ナゲットを揚げていると娘たちが片っ端から味見と称してつまみ食いする。
「江戸の昔から侍は腹が減っても、爪楊枝で戦えと申し候」
「おねぇちゃん。それを言うなら『いくさは出来ぬ』『武士は食わねど高楊枝』よ」
「左様とも申すゆえ、かたじけない」
「ごるぁ! 動画のチェックをしなさい!」
「おか~さん、痛~い」「不意打ちとは卑怯でござるよ!」
「もう一遍、叩くよ!」
「「ぅえ゛~~~ん!!」
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