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疲れてしまうから四六時中というわけにはいかないが、たとえ身内であれ勤務中と勤務外を弁えている。
まくれあがるミニスカートを抑えながらコヨーテが操縦席におさまる。
エレベーターの床が甲板と同じ高さになり、人型海洋魔物どもが機体を乗せたパレットをロープで引く。
コヨーテが術式を唱えると、にびいろの結界が操縦席を取り巻き与圧を保つ。背中から腰まで垂れた翼をもち、気密服を着用できない天使特有の儀式だ。
車止めを外しおえたニンゲンたちをシアが退避所へ引率する。出番を待ち望んでいたグレイスが、中二風味たっぷりの呪文を嬉しそうに唱えた。
『命の息吹をつかさどりし精霊たちよ、戦乙女の出立と武運長久を天高く祝福せよ!』
機体の真下に紋様がきらめき、激しく回転を始めた。
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『虚空へ』 グレイスが両手でかきあげる様に空を切ると、蛍光色の魔法陣がコーヒー皿のように機体ごと浮上する。
コヨーテ機は家族たちが見上げる中、みるみる空へ吸い込まれていき、長い飛行機雲をたなびかせた。
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