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先進導航機が超光速航行可能域に達した。フェムト秒レーザーで真空をスキャンしている。最新の理論によればビッグバン以前にも宇宙は存在し、膨張と収縮を循環している。
その際に生じたブラックホール同士が衝突した跡が残っているという。そういう空間の疲労を走査し、破壊することで異次元への突破口が開ける。
「衝突痕、スキャン反応あり」
「余剰次元ニードル準備」
コヨーテが見つけた痕跡めがけてサンダーソニア号が加速する。負の質量を持つエキゾチック物質で出来た特製のニードルが真っ暗闇めがけて発射される。
全長百メートルはあろうかという、まぶしい紫色をした針が空間に勢いよく吸い込まれる。
「今よ、全艦重力アンカー発射!」
シアの合図で虚空を渡る強襲揚陸艦とオーランティアカ級航空戦艦二隻から次々にねっとりとした稲妻が放たれる。それぞれがニードルに絡みつき終えると、周りの星々が流れ始めた。
膨張する宇宙そのものに錨をおろし、加速度を利用して光速を超えるという航法である。
三次元宇宙の内側からみれば静止した状態と全く同じなので通常の空間内で光の速度を超えてはならないという、アインシュタインの相対性理論を順守している。
「宇宙膨張論的航法!」
現在地から白鳥座まで光の速度で七十万年かかる距離をわずか十数分で跳び越える。
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