何という瞬盗? 被害は冷凍マグロ十キロです。

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「うちの女どもときたら、まるでブラックホールね! お皿は一人一枚。綺麗に残さず食べるまでおかわりしない。聞いてるの?」  色気より食い気を露わにした女性陣にシアは眉をひそめる。 「ひぃ?へるょ」 骨までしゃぶり尽くそうとしていたグレイスが顔を上げた。 「そういえば、おね?ちゃん、数奇屋(ストレンジや)って知ってる?」 唇の上にマヨネーズをつけたままソニアがたずねる。 「ああ、フードコロニーね。白鳥座のブラックホール銀座に出来たって、量子共鳴(クォンタム)チューブに動画あったね」  グレイスが術式を唱えるとサラダボウルに立体映像がゆらめいた。仕込みのサクラであろう女性客がスープをひと口すする度に、驚嘆の声をあげる。 「ブラックホールもりって美味しいのかなぁ」 ソニアが身を乗り出しつつも、片手でもしゃもしゃと串焼きをほおばる。 「ブラックボール森? 何ぞソレ?」 コヨーテが尾とかしらだけになった海鯉を脇へやり、会話に加わる。 「ら?めんのブラックホール盛りよ。トッピングに本物のマイクロブラックホールを使ってあって完食した人はいないんだって!」 「それっておいしいの? か?さん、おかわり」  コヨーテが調子に乗って小皿を妻に差し出そうとした矢先、ぱぁっと一帯が紫色の光に包まれた。     
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