スパークリング・ハスタティ

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 経験の浅い指揮官なら両方向から迫りくる圧倒的な戦力にうろたえ、撤退に有利な方角を必死に模索するだろう。  シアは違う。彼女は旗艦機能をもつ強襲揚陸艦(シア・フレイアスター)でもあるのだ。秒単位で抜け落ちる選択肢を一つでも有利に活用しようと思考を巡らせる。  死中に活を求めよというが、まさしく彼女は狭まる包囲網の中にあえて陣を進めた。  すると、敵の両翼が一斉に分裂した。数隻単位で船団を組み、めいめいの進路へ枝分かれする。  急に多方面から戦線を揃えずに突撃されてしまい、シアたちは先手を打てずにいる。 「紳士協定を結んでいたのね?!」 「スタートラインに横並びして獲物めがけて用意ドン?」 「そうよ、卑怯だわ」  シア・コヨーテ婦妻はどんよりとした気分を振り払い、戦局を次のステージへすすめた。 「こうなったらマニプルス・レギオンでいくわ! 各艦、レギオンの態勢へ移行! アストラルグレイスは艦載戦艦を引き連れて先鋒へ」 「了解」  グレイスはいつもの中二病とはうってかわって空気を読んだ行動にでる。遊びと仕事はわきまえている。  一家がこれから仕掛ける作戦は古代ローマの兵法だ。どんな方位から同時多数攻撃を仕掛けられても対処できるよう前線を分割する。     
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