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細分化された部隊を臨機応変に指揮するという、とてつもなく高い要求を満足できる艦はギルドの中でもシアしかいない。
スリムなボディにミサイルランチャーを満載した高速艇がアストラルグレイス号めがけて突進する。その両翼に同タイプが二隻ワープアウトする。
「何だよ? あの航空戦艦、隙だらけじゃねえか」
「空母のくせに打撃群を組んでねぇとはな!」
「スパイラル・グレネードの出番だぜ」
護衛を伴わないAG号を未熟者の見て取ったのか、いかつい男達が下品な嘲笑を浴びせる。正三角形の各頂点を占めるように各艇が舵を取り、AGを包囲する。
螺旋階段を昇る蛇のように巻き付いたランチャーの腹が開き、無数の小型ミサイルが獲物めがけて渦を巻く。
戦闘指揮所に陣取るグレイスは中二っぽくフンと鼻を鳴らし、セーラー服の袖をまくる。右肘を斜め四十五度にまげ、手刀を安全カバー付きボタンの上にかかげる。
「待ちに待ってた出番が来たよ! 前衛はおまかせ。アストラスグレイス、限☆界☆突☆破!!!」
うわずったソプラノ声を中二美女らしくキラキラと輝かせつつ掌を振り下ろす。彼女の周囲に蛍光色の測定値が乱舞し、原色で彩られたパネルが「限界突破」の文字で埋め尽くされる。
限界突破!限界突破!限界突破!限界突破!
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