ホーキング輻射と感謝祭（メリーユアハイネス）

小狼姫、がんばる!

　■　小狼姫、がんばる。
　膨張する宇宙にそびえ立つエキゾチックニードル━━茫洋たる虚空に浮かぶ長さ百メートルほどの直方体から、にょきにょきと人間の腕が生え、十万トン級の航空戦艦を掴み取った！
　ＡＧを護衛していた戦艦チャタヌーガの五十口径三連装砲二門が揃ってニードルを狙い撃つ。数発撃って相手が無傷と判るやいなや、一発ずつ、弾種を変えて発射する。
　それでも相手がノーダメージとみるや、弾の無駄遣いをやめた。
　彼女は人間から派生したライブシップではないので、戸惑いや驚きといったルーチンを持たない。
　ソースコードレベルから戦闘に特化したＡＩが条件分岐に従って、淡々と反撃の手順を踏む。
　量子砲弾を含む物理攻撃が効かないのなら、非科学兵器の出番だ。
　チャタヌーガは艦隊通信網を通じて旗艦に戦闘純文学者の出撃を要請した。
　その、頼るべき強襲揚陸艦(フレイアスター)に軟体動物のようなグニャリとした肉塊がまとわりつき、激しく揺さぶっている。艦橋を巨大な拳骨が何度も打ちのめしている。
　エリコーン・コントラバス複合砲身がゼロ距離射撃を試みているが、肉塊はただ閃光に照らされるだけだ。