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艦隊のCEC━━共同交戦能力がコヨーテを現実に引き戻した。戦闘指揮に利用できる精度の高い情報を艦隊で共有し、一致団結して脅威に対処できる能力を付与することだ。
とまどいの感情をおしのけて、交戦意思決定システムがコヨーテの大脳に攻撃すべき座標値を配布する。
「それはこっちの台詞よッ!」
コヨーテは意に介さず、愛機を鞭打った。短距離ワープデバイスを始動。着地点をエキゾチックニードルの破片に設定する。
小さすぎて座標が定まらない。常に真空を擾乱する仮想粒子がカシミール効果を生じさせる影響で、閾値を下回る大きさの物体にワープ座標を固定できない。
「もう、こんな時に」
コヨーテはヒステリーを起こしつつ、ワープコンソールの詳細設定画面を開いた。座標を破片周辺に仮設定して、強引にフィールドジェネレーターを起動する。
「……? ……! ……!!」
ワープドライブが起動しない。パニックに陥った彼女は躁病のピアノ奏者のようにコンソールをあちこち叩きまくる。それでも機体はうんともすんとも言わない。
「グレイス! ソニア!!」
泣き叫ぶコヨーテの瞳にはフェードアウトしていくエキゾチックニードルが冷やかに映っていた。
悲劇の余韻に浸る間もなく、CEP(共同交戦処理装置)が彼女に戦闘開始を促す。
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