何という瞬盗? 被害は冷凍マグロ十キロです。

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「ベローゾフ・ジャボチンスキー反応液、確認!」  異常発生時の手順にしたがって、グレイスがフラスコを虚空に掲げる。 「「撹拌パターン、紫」」 ソニアとコヨーテが視認し、確率変動波の有無を判定する。これが青なら、即座に臨戦態勢となる。 「特権者の攻撃。なし!」   敵にロックオンされてない事にコヨーテが胸をなでおろす。偉大なる女帝にささげる感謝祭のイブが血で穢れなくてよかった。 「あなた! 異変がないか確認してね! ソニアたち、けがはなかった?」   物干竿より長い対物量子(アンチマテリアル)ライフルを空に向けたシアが背中越しに訊く。  まだ食い足りないのか、クーラーボックスの中身を点検していたコヨーテががっくり肩を落とす。 「けがは無いけどよ……」 「めしが無いよ」  グレイスが嘆く。 「冷凍マグロ十キロを瞬殺する子がいますか!」 腰に手を当ててあきれ返るシア。 「「「わたしじゃないよ」」」 三つの声がハモる。 「じゃあ、誰が盗んだっていうのよ!」  シアは興奮した声で言った。フラスコが、ごぼごぼと緑色に泡立ち始めた。
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