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室内鳥類学者と爆誕☆艦隊が?るず♪
■ 陥穽
猛り狂う女がいる。
愛する伴侶を失い、娘を二人も失い、日々の平穏を失い、感謝の気持ちを捧げる機会を失い、無意味と化した己が存在意義の焦点を、ただ一点に絞る女がいる。
━━復讐だ。
復讐は無意味な憎悪の連鎖を呼び、ただ空しさしか残らないと偽善者はいう。
蒙った被害を補償で満足するのではなく、加害者の苦痛で贖う事に意味が無い筈はない。
消滅した存在は蘇らないから仕方なく金銭に換算するのであって、愛することを手放したわけではない。
滅ぼされた者の無念を相続して何が悪い。
コヨーテの怒りは最高潮に達した。
家族が得体のしれない生物兵器に喰われた。ただ、肉体が消化されたのなら案ずることはない。
人類が自らの手で死を司る神を討った現代では、ただちに魂を回収し新たなクローンボディに呼び戻せばいい。
往生特急という幽霊列車が人類圏をくまなく駆け回って、亡者を惑星プリリム・モビーレ━━かつて、あの世と呼ばれた場所へ連れていく。
そこで再生を果たし、家族にはメール通知させる。
彼女は一縷の望みをかけた。
『検索条件【蘇生通知】を含むメールは存在しません』
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