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先進導航機のメールボックスにはシアたちの蘇生予定が通知されなかった。
魂の消失と呼ばれる最悪の不幸だ。原因は様々だが、一概に言えるのはヒトとしての魂が崩壊してしまったということ。
ロストした魂は命の雫に還り、細菌から竜類までさまざまな命の種子となる。
こうなったらもう蘇生は不可能だ。
家族の魂が「喰われて」しまった。
「シア、グレイス、ソニア……」
不老不死、何千年も何万年も歩みをともにする筈のパートナーを失った悲しみに押し潰されまいと、コヨーテは自分を焚きつけた。
「お前たちの家族もロストしちまえ!」
彼女は溜まりに溜まった想いを一本の量子回線に注ぎ込んだ。
前衛を担うゲティスバーグ改級戦艦三隻にヨアヒムの「惨殺」を命じる。砲身が一斉に火を噴く。
凶悪犯に肉親を惨たらしく殺された家族、飲酒運転の車に轢かれた子の両親、欠陥商品に命を絶たれた被害者遺族。彼らと共通の感情が敵艦に突き刺さる。
……だが、人を呪わば穴二つと諺にある通り、彼女の艦隊は見えない陥穽に落ちた。
ヨアヒムは粉みじんになるどころか、威風堂々たる姿を星の海に横たえている。
被弾するどころか、吸血鬼が美女の生き血を啜るがごとく、戦艦の動力を奪っていく。
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