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まずは、現場検証である。クーラーボックスを最後に触ったのはコヨーテとグレイスである。惑星ホールドミーを周回する偵察衛星が二人の足取りを捉えていたが、フレイアスター家のある赤道上の孤島からは一歩も出ていない。島の各所を地下数百メートルまで探知できる資源探査衛星で走査してみたが、冷凍マグロらしき物体は検知できなかった。
十センチ単位の解像度をもつ気象衛星が赤外線でスキャンしてみたところ、フレイアスター家の冷凍庫以外に摂氏零度前後の熱源は存在しない。
また、二人の身体をエックス線検査してみたが、消化器官の中にマグロは見つからなかった。
ロケットの熱源や大気中の化学変化を察知する核実験監視衛星まで繰りだしたが、二人が結託してマグロを移送した痕跡はない。というか、彼女たちにはアリバイがあるし、ソニアという目撃者もいる。
巧妙なトリックを用いた可能性も否定できなくはないが、イリュージョンを施す程の大道具も時間も無い。
次は動機だ。食い意地の張った二人がマグロの隠匿をはかることは大いに考えられるが、はたして女の子二人が十キロもの冷凍マグロを瞬時に食い尽くせるだろうか?
ソニアが共謀したと仮定しても、一人当たり三キロ弱の魚肉である。それ以前に彼女らは鯉だの海鮮サラダだの結構な量を食っていたのだ。
では、食べる以外の理由となると、すぐに考え付くのが転売目的だ。
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