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なるほど、量子共鳴オークションに出品すれば、枕やシーツを配偶者に選ぶような好事家が興味を示すかもしれない。美人の誉れ高き女帝が女所帯に配布したマグロである。入札開始とともに値段は爆あげ必須、天井知らずになるだろう。
シアは軌道上の恒星間通信衛星からログをダウンロードした。晩餐の開始以降、二人が量子共鳴ネットに接続した記録はないし、外部からアクセスされた形跡もない。
「量子テレポーテーション送受信機を使えば、オリジナルが損なわれることなく惑星外にコピーを持ち出せるわ」
グレイスがコヨーテに疑いの目を向けた。
「そうね。ママがおか~さんに内緒で小遣い稼ぎのために、あらかじめ商談をまとめていたとか?」
同性婚カップルの世帯主に該当する呼称がないため、しかたなくコヨーテをママと呼ぶソニア。
槍玉にあげられた当人は長いエルフ耳をパタパタさせて、否定した。
「め、め、滅相もない。俺……いや、あたしに女帝陛下から賜ったマグロを密売するほどの度胸がありますか?」
膝丈フレアスカートの裾をいじって、しどろもどろするコヨーテ。
「それもそうね。 おか~さんの顔色をいつも伺ってるママが大それたことできるとは思えない」
彼女の頭のてっぺんからつま先まで何度も眺めて、ソニアは納得するように言う。
「でも、ママは気弱だから片棒を担がされているだけかもしれない」
「そんなぁ」
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