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「本人の意図や気付きにかかわらず組織犯罪に関与させられる可能性はあるよね」
たたみかけるグレイスの耳をシアがつねった。
「痛い痛い」
「もう、家族同士でいがみ合うのは止めましょう。二大陣営に分かれて戦わされるのはこりごりよ」
あのいまわしい三日間戦争の記憶を振り払うようにシアは娘たちをいさめた。異世界から来た侵略者の策略で一家離散したあげく、互いに敵意むき出しで殺し合ったのだ。
彼女は二度と同じ愚を犯すまいと娘たちをぎゅっと抱きよせた。
「いい考えがあるわ。この惑星に何者かが出入りした痕跡があるかないか家のクアックスを調べればいいのよ」
思いがけず妻に助けられたコヨーテは形勢逆転を喜ぶように、提案した。一家はさっそく丘の上にある自宅へ戻った。
QAXは量子テレポーテーション技術を応用した簡易物質複写機だ。送信元の構造をスキャンした結果に基づいて、送信先の分子プリンタを遠隔操作する。
「スキャンの際に発生する量子揺らぎにQAX自体が巻き込まれてグダグダになるのよ。だから自分自身の構造を定期バックアップしてる」
コヨーテは嫌疑を晴らそうと、リビングに置いてあるQAXの前で懸命に履歴をたどっている。
「宇宙線などのノイズの影響も記録してあるのよね」
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