理不尽な夢

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理不尽な夢

 半月程前から見ている夢がヤバい。  最初にその夢を見た時、俺は夢の中で足首を切断された。すると翌日、両足首に怪我をした。  次にその夢を見た時、俺には両足首から先が無く、追い打ちをかけるように膝までが切断された。すると今度は両方の膝下に怪我をした。  夢の中で切断されたると、そこ部分から亡くなったパーツにかけてのどこかを怪我する。そんなとんでもない夢を二、三日おきに見て、そのたび必ず傷を負う。怪我の程度はたいしたものではないけれど、それでも痛いことは痛いし、なによりこのままではもっと大怪我をすることになるのではと不安だ。  今度同じ夢を見たら、体のどこも切断されたくないと念じてみよう。そうすればもう怪我をしなくなるかもしれない。  そう考えたその夜、早速のように俺は夢を見た。  いつものように、見えない刃物が俺に迫ってくる。そのヒリヒリした感覚だけが伝わる。  やめろ。いやだ。切断されたくない!  心の中で必死に唱える。すると近づいてくるヒリヒリ感が止まった気がした。  念じるのは有効みたいだ。このままひたすら拒絶を示そう。  そう思った直後、頭の中にどこからともなく声が響いた。 『どうしていや?』  …コイツは何を言ってるんだろう。どうしてって、夢だとしても体を切断されるのは怖いし、現実世界で怪我をすれば痛い。  誰だって痛いのも怖いのもいやに決まってる。だから切断なんかされたくない。 『痛いのはいや? 怖いのはいや?』  当たり前だろ! 『だったらこれで終わりにする。もうこれ以上、痛いのも怖いのもなし』  判ってくれたか。そう思った直後、俺の首と胴体が離れ離れになった。  …そういうことじゃないだろ!  目が覚めたら今度は首を怪我するのか。もう、それはどうしようもないと受け止めるから、現実では、痛さも怖さも二度と味わわなくて済む状態にはならないでくれ。 理不尽な夢…完
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