純すぎて〇したい君

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君の目、君の香り、君の声……その何もかもが僕にとって完璧に形成されていて、こっちを振り返る度にいつも、砂場の城を崩すように滅茶苦茶にしたくなる。 ――15歳の夏、僕は初めて愛を知りました。 細く白いうなじに両腕を伸ばした。もうすぐで手の届く所にくると僕は震えた。君は「どうしたの?」と振り返って僕を見つめていた。その澄んだ瞳にはっと気がついて、両腕を引っ込めた。 「別に。何でもない」 無理矢理つくった笑顔は乾いている。 「そう。それにしても両くんの部屋、いつも片付いているね。誰も部屋に住んでないみたい」 「ものを置かない主義なんだ」 「ふーん、私も見習わなくちゃ」 その夜僕は、リビングで姉がながしていた映画を観た。毒にも薬にもならない純愛を描いた作品だった。 画面の中の主人公は、まるで硝子細工のようにヒロインを大事にしている。主人公は「君を傷つける奴は許せない」と言っていた。 僕にはその気持ちが理解出来なかった。 一人部屋のベッドの上でヘッドフォンから垂れ流すのは、罪深い妄想だった。 君はその丸い水晶のような目から涙を零し、赤い唇からは必死に生をねだるだろう。そうして初めて、君の全ての感情を手に入れることが出来る。 僕は君に言う。 「愛してる。君を――したい程」 ついに君はどこか、宇宙か何かを眺めて、物質的にも僕だけのものとなる。 その顔はどんな苦痛に歪むのか。 ――17歳の冬、僕は君の首に手をかけた。
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