ミルクティ

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 可愛らしい首をちょこんと傾げ、それからまた食べるのに夢中になった。 「まだ、ムリか・・・」  幼い少女はがっかりした表情になった。 「あなたがおしゃべりできないと、いつまでたっても、わたしは独りね」  湯気の上がるパッケージを開くと、温野菜とローストミートのライスロールサンドの匂いが漂った。  ミルクティがひとくち目を頬ばったとき、ペットの耳がぴくりと立った。  ビーンズの皿から口を離して、そわそわしたように警戒をはじめたのだ。ミルクティを見上げると、一気にジャンプして肩に飛びのった。 「どうしたの?」  やがて、床にかすかな震動が伝わった。足の裏がびりびりとするような揺れ方だった。   体が左右にゆっくりと往復するような感覚だ。 「地震?」 <きゅるるる、きゅるるる・・・>  メルが唸りだした。    どううううん。  どううううん・・・・  遠くから地響き。  それは、くるぶしをつかまれてすくわれるような、ゆっくりした揺れに変わっていった。  テーブルの食器が小刻みに鳴りはじめた。  ミルクティは大きな揺れに備えて、テーブルの縁につかまって、身構えた。  だしぬけぬに、玄関のドアが勢いよく開いた。  運河建設技師の制服姿の男たちが現れて、エントランスを壁のように塞いでしまった。 「ミルクティ!!」  運河技師のひとりが大きな声を上げた。 「あ、パパだ!」  三人いた男たちの中に父親を発見して、すぐに駆け寄った。  父親以外は知らない人たちだった。   「ミルクティ! たいへんなことになった。いますぐ荷物をまとめてここを出るぞ!」  父親は少女を抱き上げた。 「スーツケースに大事な物を詰めなさい!」  いつもの優しいパパとは違っていた。  眉間にしわがより、厳しい目つきになっている。その目は真っ赤に充血していた。 「着替えと非常食と水。メルのごはんも忘れるなよ」 「うん。部屋に置いてある緊急持ち出しバッグのことでしょ?ピンク色の」 「ああ、それだよ。ママといっしょに用意したやつだ」  パパの声はいつものように柔らかかったが、やはり、どこか刺々しかった。 「パパの顔が怖いよ!どうしたの? ママはどこ!?」  ミルクティは悲しくなって、涙を浮かべた。父親の態度が尋常でないことを悟ったのだ。  パパの顔もしわくちゃに崩れた。
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