ミルクティ

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 浅黒く火星焼けした頬に、大粒の涙があふれ出した。  パパの泣き顔を見るのは、生まれて初めてだった。ミルクティはびっくりしてしまって、本当にたいへんなことが起きたのだと、思った。 「ママは悪い人たちと戦って、・・・とても勇敢だった。遠いお星様になってしまった・・・パパは、ママを・・・、ママを守ってあげられなかった。すまない」  父親は幼い少女を抱きしめた。 「ママは、死んだ、の?」  ミルクティは瞳を大きく見ひらいた。華奢な手がぷるぷると震えた。  パパはうんうんと頷くだけで、言葉を発さなかった。   「ママは帰って来ないの?」 「ああ、そうだ」 「うそでしょ?」 「ミルクティ、よく聞くんだ。悪い奴らはここへも来る。だから安全な場所へ避難するよ」  父親は、抱き上げていたミルクティを、そっと床に下ろした。 「緊急避難用のピンク色のスーツケースを持っておいで。パパは自分のを持ってくるから」  パパはもう泣いてはいなかった。手の甲で涙をぬぐうと、いつものようにてきぱきと行動した。 「おふたりさん。気の毒だけど、急がないと」  パパといっしょにやってきた仲間のひとりが、せかすように言った。  制服に、スウェイという名前がプリントされている。   「ああ、わかってる。支度するまで、五分待ってくれ」  ミルクティは大人たちのやりとりを聞きながら、ベッドルームに入った。  ピンク色のキャスターつきのスーツケースを運び出す前に、枕元に置いてあった黄色いバックパックを背負った。バックパックの中身はレディの必需品だ。 「おいで、メル。あたしの肩にのるのよ。それから、これらからは勝手にお散歩に行ってはダメよ。わかってる?」  ジャンボリスは、ぴょこんと少女の肩に飛び乗った。ふさふさした尾っぽをぴんと立てた。 「あのね、ママが死んだの。遠いお星さまになったそうよ。あたしも大きくなったら、ママの星を探しに行くの。あなたもいっしょよ、メル」  メルは可愛らしい舌をだして、ミルクティの首筋を舐めた。 「おーい! 支度、大丈夫か?」  パパがベッドルームのドアを開けた。 「ゴーグルも忘れるなよ」 「はい、パパ!」  ミルクティは、壁にかかった超合金チタン製のゴーグルヘルメットをかぶった。  無線機、緊急栄養剤、5000時間ライトが内臓されているすぐれものだ。
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