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悲鳴と怒号が交錯する。
連続する銃声。
鼓膜が切れそうな大きな爆発音。クロゼットの天井裏に、ばさばさと物が落下してきた。
からん、からん。
バス全体が大地震のように揺れた。
かん、かん、かん かん・・・
車体にめり込む弾頭の音だ。
二人の少女は頭を抱えて、辺りが静かになるのを待たなければならなかった。
「こわいよー、こわいよー・・・」
サクラちゃんが泣きだした。
「あたしもこわいよー」ミルクティはサクラちゃんの手をしっかり握った。「でも、ここなら平気よ。クロゼットは頑丈だから・・・」
根拠はなかった。パパがここに隠れなさいと言ったのだ、だから大丈夫だと思ったにすぎない。
早く静かになってほしかった。
ただひたすらにそれを願い続けた。
ミルクティだって、早くパパに会いたくて、いてもたってもいられなかったのだ。
かん、かん、かん、かん・・・
また車体を叩く音だ。
「うっ」
暗闇の中で、サクラが呻いた。
「背中が熱くて痛いよ!ミルクティちゃん! あああ・・・」
握りしめていたサクラの手の力が急に抜けた。
「どうしたの!?」
ミルクティはゴーグルヘルメットのライトを点けた。
サクラちゃんはもう息をしていなかった。服のまわりが真っ赤だった。
弾頭が車体を貫通して、少女の命を奪ったのだ。
「サクラちゃん、サクラちゃん!」
ミルクティはサクラの小さな体を揺すった。
「ひどい、ひどいよ! どうしてこんなことに!」
泣き崩れた。
どのくらい泣いていたのかはわからなかった。
突っ伏したまま、眠ってしまったのだろうか。
指先に刺すような痛みを覚えて、それで眼が覚めたのかもしれない。
メルだった。
メルがミルクティの指先を甘咬みしたようだ。
「まあ、メル!」
外は静かだった。
火薬と金属の焦げる臭気が、クロゼットドアの向こうから、忍びこんでいた。
ミルクティは恐る恐るドアをそっと押した。
わずかに開いたドアの隙間に、ぱちぱちと火花を落とすケーブルが見えた。
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