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「羽鳥さん、なんですぐに警察に届けてくれなかったんですか?言ってくれればこんなことにはならなかったんですよ」
羽鳥は下を向いていった
「すみません、、」
杉山が鼻をふかす
「ふ、、」
「あの、アユムくんはどうなりますか?また親の所に行くのですか?」
「安心してください。二人が虐待していた事を認めて、アユムくんは施設で保護されることになりました」
「良かった、、それでアユムくんとはいつ会えまか?」
杉山が大きなため息をついて言った。
「羽鳥さん、アユムくんとはもう会うことはできません。他人のあなたに何ができますか?彼に必要なのは新しい里親だと思います。羽鳥さん一人で他人を育てるなんてことは考えが甘いですよ」
「それは、、分かっているつもりです、、」
「つもりでは困ります。彼にとって今が大事なときなんですよ」
「はい、、」
「分かってもらえたらそれでいい、今日はもう帰って結構です」
家への帰り道、電車の窓から外を眺める。窓の外に一瞬だけ動物園が見えた。
私は彼に何を見ていたのだろうか、あのまま一緒に居られるなんて幻想に取り憑かれ、目が覚めればまたいつもと同じ一人になった。
母も父もいない独り、、
孤独に、、
駅の改札を出た時に、小さな雨が降って来た。
あの日はもっと激しく、小さな心を砕いてしまうような雨が、
優しく降っている。
父と私の思い出は、どうだっただろう。
私は父に嫌われていると思っていつからか父を避け、家も出た。
父は死ぬ前に何も思っていたのだろう、
母のこと?生きた人生を?
今となっては何もわからない、、
誰もいない部屋についた、、
また、いつもと同じ何もない日々が始まるのかな、、
何気なく玄関ポストに目がいった、、
叔母さんから一通の封筒が届いている。
なかを開けてみると、写真が一枚、
それは、、小さな私を抱きかかえる父との動物園の写真だった。
父は私を愛していたけれど、愛し方が分からないほどの不器用な人だったのだと実感した。
「ねえ、叔母さん、お父さんについて聞かせて」
「急にどうしたの?この前までは嫌そうにすぐに帰ったくせに~」
「うん、ちょっとね、」
「そうだね~どこから話そうかな」
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