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 思い出の中の俺は成長して中学生になっていた。  俺は電車に揺られていた。  野暮ったい紺のジャージ姿の美菜は、足元に剣道の防具を置き、俺に背を向けてドアの脇に立っている。  中学最後の県大会出場をかけた地区大会の帰りだ。剣道部の三年生は俺と美菜しかいなかった。 「……」  俺は美菜にかける言葉を探していた。  人数不足で団体戦に出場できない俺たちの中学は個人戦だけの出場だった。俺は何とか男子の部門で勝ち残り、準優勝で県大会への出場を決めた。しかし、ともに小さな部活を支えてきた美菜は女子の準決勝で優勝した選手に敗れ、県大会への切符を逃したのだ。  何を言っても、おためごかしになりそうな気がした。  それでも、言わずにはいられない。 「いい試合だったよな。決勝の相手よりよっぽど優勝した子を苦しめてたぞ。あとであの中学の主将と話したらさ、優勝した子は準決勝でお前に勝てるかどうかだけが不安だったって言ってたそうだ」 「ウソばっかり……」  あたりをはばかるような押し殺した声が返ってきた。電車のドアのガラスに映る美菜は固く口を引き結び、じっと遠くを見詰めていた。
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