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 車の鍵をかける。ふたりのうしろ姿は駐車場の出口近くだ。走ることが億劫で、宗像は姿を見失わない程度の距離を保った。気が急いているらしく、あつしは香苗とつないだ手を引っ張りながら目的の遊園地へとむかっていく。  香苗が振り返った。  遠くて表情まではわからないが、その光景をほほえましく眺める。ふたたび、ふたりは前へ突き進む。  ふたたび、香苗がこちらを見る。  何かを呼びかけている。耳を澄ますが道路を走るトラックの騒音に掻き消されてしまう。宗像は短くため息を鼻から吐くと、歩調を早め、香苗の口の形を追うことに集中した。 ――マンマ?……ババア?……いったい何をそんなに……! 「パパ!」  必死に叫ぶ香苗がいた。苦痛をたたえた顔に汗がにじんでいる。あつしは何を気にする様子もなく、ただ一心に母親を先導している。いいや、ひきずっている! 「あつし!」  腹の底から声を張りあげて名前を叫んだが、あつしの動きはとまらない。駐車場出口の大通りに設置された歩行者用信号機が赤になった。停車していた車が動きはじめる。パパ! 香苗の口が宗像にすがりつく。  ふたりが横断歩道に差しかかる。香苗は手を振りほどこうと懸命にもがいている。あつしはほかに何も目にはいっていないのか、真っ直ぐ横断歩道を渡りにかかった。     
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