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 あつしも香苗も、宗像さえ声をあげられなかった。一台の大型ダンプが三人のあいだを走り抜けた。少なくとも宗像にはそう見えた。車が過ぎたあと、危ないだろ、と怒鳴るつもりでいた宗像の前に、ふたりの姿はなかった。次々と大型のダンプカーが通過していく。遠くで一台目のダンプが脇に停車した。道路が赤黒く濡れている。香苗とあつしを探したが、しばらく目は宙空をさまよった。道路の分離帯の植えこみに確かに先ほどまで目にしていた覚えのある柄の布きれをまとった塊があった。 ――あ、つし?……!  どこで見ていた柄なのか思いだせたとき、宗像は大声をあげて駆けだしていた。
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