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 葬式は雨の降るなかで執り行われた。香苗の両親や知人、近所づきあいのあったマンションの住人が参列するなか、あつしの級友からひとりが代表で弔辞の句を読みあげた。経に絡まりながら啜り泣く声が聞こえる。棺の前で線香をあげる弔問客に頭をさげていると、そのたびにふたりが本当にいなくなってしまったのだという現実がいく重にも積もり、宗像を押し潰す。絶望しているというのに涙することもできず、壊れた玩具さながらに、頭を垂れつづけた。  はじめて棺に収まったふたりを見たとき、先立つものは安堵だった。事故現場に散らばっていた肉片が、つながっていた。傷跡には化粧が施され、今にも起きだしそうな寝顔をしている。  写真はマンションのエントランスで撮影したものだ。一年前、新しくデジタルカメラを買い替えた際に、一枚めの記念だからとふたりの姿を収めた。変わらない香苗と少し背の低いあつし。それぞれの四角い枠のなかに笑顔で写っている。  ご愁傷様、とかけられる言葉に力のこもらない返事をする。動く口からは何も発せられないうえに、必ずため息だけは深く長くついてしまう。弔問客は一様に口を閉ざし、場をあとにした。     
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