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 机に近寄り、パソコンを立ちあげる。途端、部屋が薄ら青く浮かびあがった。昼間には日当たりもよく隅々まで光のいきわたる見慣れた部屋も、天候のせいか、今ばかりは違う。影に何か潜んでいる気さえする。気の小さい自分自身を嘲けつつ、深呼吸をする。両腕を大きくあげて、胸を反らす。肩を回し、腰を捻り、最後に首を左右に振った。軽い倦怠感が身体を覆っている。なんだかんだ、疲れていたらしい。椅子に座ると背もたれが高い音で軋みをあげた。マウスをクリックしてインターネットに接続する。さらにページを進めると、あるサイトのトップページが画面いっぱいに映しだされた。  最近になって、達也はデジタル音楽プレーヤーに音楽以外のデータをいれて楽しんでいる。 はじめてプレーヤーを手にしたのは二年前だ。渋谷のハチ公前でかたまって動こうとしない五、六人の中学生たちのひとりにむかい、勢いをつけて背中へ跳び蹴りをかました。当然、周りが迷惑しているといった良心からではない。自分の進む道のうえで邪魔になっているゴミを取り除いただけだ。もんどり打って倒れた相手を馬乗りになって殴りつづけた。拳を叩きつけるたびに、目の前にある顔は面白いように形を変えた。  相手が白目をむいたのを確かめてから立ちあがった。そのあいだ、男子生徒の連れは助けを出すわけでもなく、黙って仲間の見てくれが変わっていくさまを目に映しつづけていた。 ――こいつらの友だち付き合いなんてたかがしれている。所詮、こんなものだ。     
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